専門商社の年収を比較|平均給与と業界ごとの違い

専門商社の年収比較を表すイラスト

専門商社の年収は、同じ業界の会社でもかなり違います。2026年3月期の有価証券報告書で確認した事業会社9社の平均年間給与は、約784万〜1,202万円でした。長瀬産業、稲畑産業、岩谷産業、東京エレクトロンデバイス、兼松は1,000万円を超えています。

ただし、検索結果に出てくる高い数字が、応募先の会社を示しているとは限りません。マクニカホールディングスの平均は約1,629万円ですが、同じ有価証券報告書に載る事業会社のマクニカは約784万円です。この二つを区別せずに比べると、入社先の給与を大きく読み違えます。

以下では、対象期間を2025年4月1日〜2026年3月31日に揃え、会社本体の給与と、持株会社の給与を分けています。年収の金額に加え、年齢、従業員の範囲、株式報酬の有無まで確認し、就職・転職先を比較するための材料を整理します。資料の確認日は2026年10月17日です。

専門商社9社の年収比較

比較表の「年収」は、各社が開示する平均年間給与です。給与を平均した対象は各社の従業員で、グループ全体ではありません。マクニカだけは、上場持株会社の有価証券報告書に記載された事業会社の数字を採用しました。

会社 主な分野 平均年間給与 平均年齢 平均勤続 従業員数
長瀬産業 化学品・素材 1,190.1万円 41.2歳 14.7年 942人
稲畑産業 化学品・合成樹脂・情報電子 1,005.8万円 40歳11か月 13年0か月 678人
阪和興業 鉄鋼・金属など 997.6万円 37.4歳 11.3年 1,820人
岩谷産業 エネルギー・産業ガス 1,020.6万円 39.8歳 15.3年 1,384人
YUASA(旧ユアサ商事) 産業機器・機械・住設 839.2万円 38.3歳 11.4年 1,286人
加賀電子 電子部品・電子機器 819.6万円 42.6歳 13.9年 583人
東京エレクトロンデバイス 半導体・情報システム 1,075.0万円 46.2歳 14.2年 1,182人
マクニカ(事業会社) 半導体・ITソリューション 784.0万円 39.4歳 11.2年 2,894人
兼松 電子・食料・鉄鋼・車両など 1,201.6万円 37.7歳 12.1年 861人

2026年3月期実績。年齢・勤続・人数は2026年3月31日時点。給与は原数値を万円に換算し、小数第1位に四捨五入。人数は各社の給与表に併記された値で、必ずしも給与計算の対象人数と完全には一致しません。臨時従業員の外数は表から省略。分野は事業内容をもとにした編集上の整理で、順位ではありません。

この9社から「専門商社全体の平均年収」を計算することはしていません。企業規模や分野を網羅した標本ではなく、同じ決算期の一次資料で確認できる代表例を選んでいるためです。食品・繊維を含め、今回の表にない分野の給与水準まで表すものではありません。

表のなかでは、兼松と長瀬産業が約1,200万円、稲畑産業・阪和興業・岩谷産業が約1,000万円となっています。ただし東京エレクトロンデバイスには株式報酬などの固有項目が入り、阪和興業と加賀電子では従業員の集計方法にも差があります。細かな金額順で入社先を決めるより、気になる会社の給与が何を含むかを続けて読む方が役立ちます。

三菱商事など総合商社7社の給与は、別の記事で同じ2026年3月期を比較しています。専門商社の表に総合商社を混ぜず、志望先の範囲を広げたいときに参照できるよう分けました。

素材・エネルギーで比べる

化学品、鉄鋼、エネルギーは商材の分類であり、給与制度の分類ではありません。扱う分野が近い会社でも、社員の年齢や本体に残している機能が異なるため、まず会社ごとの開示を読みます。

長瀬産業と稲畑産業

長瀬産業は平均1,190.1万円、稲畑産業は1,005.8万円で、差は184.3万円です。平均年齢は長瀬産業が41.2歳、稲畑産業が40歳11か月。平均年齢が近くても給与平均は同額にならず、年齢だけでは会社間の差を説明できません。

長瀬産業の給与表に併記された人数は942人ですが、連結従業員は7,756人です。稲畑産業も提出会社678人に対して連結は4,719人。両社の給与は、海外や製造を含むグループの全従業員を平均した値ではありません。

事業の区分にも違いがあります。長瀬産業は機能素材、加工材料、電子・エネルギー、モビリティ、生活関連などに展開し、稲畑産業は情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂を区分しています。「化学品商社」という呼び方だけで担当業務まで同じと考えると、比較の前提がずれます。

この差から「高い方が仕事の難度も高い」と結論づけることはできません。給与表に職種別の内訳はなく、担当する顧客や勤務地も平均にまとめられています。応募先を比べる段階では、同じ分野の会社として候補に残し、募集職種や配属範囲を次に確かめる使い方が適切です。

阪和興業は鉄鋼だけの給与ではない

阪和興業の平均年間給与は997.6万円で、平均年齢は37.4歳です。提出会社の従業員1,820人のうち、鉄鋼事業は851人。ほかにもプライマリーメタル、リサイクルメタル、食品、エネルギー・生活資材、管理部門などの社員が含まれています。

したがって997.6万円は、鉄鋼営業に配属された社員の平均を切り出した数字ではありません。鉄鋼分野に関心があって同社を調べる場合でも、全社平均と部署の処遇を区別して使う必要があります。

集計対象にも特徴があります。従業員数は社外への出向者を除いた正社員で、取締役を兼任しない執行役員、契約社員、臨時社員、受入出向社員を含めていません。海外駐在員1人は従業員数や年齢には入りますが、平均年間給与の計算からは除かれます。休職者・休業者も給与の計算対象外です。

この注記を読むと、人数を給与平均の正確な分母として扱えないことが分かります。997.6万円に1,820人を掛けても、そのまま会社の年間給与総額を求めたことにはなりません。

岩谷産業はガス事業と本体を分ける

岩谷産業の平均年間給与は1,020.6万円、平均年齢39.8歳、平均勤続15.3年です。提出会社1,384人に対し、連結従業員は12,113人。家計向け・産業向けの事業を含む大きなグループのなかで、給与表が示しているのは本体の数字です。

本体の従業員内訳には、総合エネルギー426人、産業ガス・機械407人、マテリアル145人、全社共通406人が記載されています。平均1,020.6万円を「水素関連の仕事の年収」や「ガス営業職の年収」と読み替えることはできません。

同じ看板のグループ会社が採用していても、雇用契約を結ぶ法人が岩谷産業本体とは限りません。会社名の一部に「イワタニ」が入っているかではなく、募集要項に書かれた雇用主と給与条件を照合する必要があります。

半導体・機械商社の違い

電子部品や機械を扱う商社でも、給与に含まれるものと仕事の広がりは一様ではありません。

電子系は株式報酬の有無を確認

東京エレクトロンデバイスの平均年間給与は1,075.0万円です。ただし、賞与と基準外賃金に加えて、信託型従業員持株インセンティブ・プラン「E-Ship」の分配金と、中期業績連動株式報酬を含みます。会社は、これらの支給により平均年間給与の増加率が高まったと説明しています。

前年比13.7%という伸びを「毎月の基本給が13.7%上がった」と読むのは誤りです。通常の月例給以外の支給が平均に入っているため、前年との比較でも、その年だけの支給がないかを確かめる必要があります。

加賀電子の平均は819.6万円で、平均年齢42.6歳です。同社の従業員数583人には、社外からの出向者のほか、契約社員、パート、嘱託社員を含むと注記されています。正社員だけを対象にした会社の表と、人数の条件が完全に一致するわけではありません。

両社の金額を並べること自体は、候補を探す入口になります。ただし、株式報酬を除いた給与や同じ職種・等級の給与を今回の資料から再計算することはできません。差額だけを「半導体商社の待遇差」として確定させない方が、比較を誤らずに済みます。

YUASAは旧社名と対象年度を確認

YUASAの平均年間給与は839.2万円、平均年齢38.3歳です。ユアサ商事から株式会社YUASAへの商号変更は2026年4月1日。今回の給与対象期間は変更前の2025年4月〜2026年3月で、有価証券報告書は変更後の社名で提出されています。

過去の「ユアサ商事の年収」と現在の「YUASAの年収」は、別会社になったという意味ではありません。検索する際は旧社名も併用し、報告期間と会社の正式名称を確かめると、時系列の取り違えを減らせます。

本体の従業員は、産業機器、工業機械、住設・管材・空調、建築・エクステリア、建設機械などに分かれています。この給与平均は、工場向けの機械営業だけでなく、建設や住環境に関わる業務も含む会社全体の結果です。

兼松は複数分野を持つ比較対象

兼松は平均1,201.6万円、平均年齢37.7歳です。ICTソリューション、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空などに展開しており、特定の商材一つだけに絞った会社ではありません。今回の表では、総合商社7社以外の複合的な商社を比べるために掲載しています。

給与表の従業員数は861人ですが、他社からの出向者16人を加え、他社への出向者139人を除くと、就業人員は738人になります。この調整は有価証券報告書に明記されています。

同じ資料でも、給与表とセグメント別の人員表で人数が違う場合があります。861人と738人のどちらかを誤りと判断するのではなく、在籍する会社と実際に働く会社の違いを確認する例です。部署の人数から給与の平均を逆算することもできません。

マクニカで分かる持株会社の差

企業名の表記を少し違えるだけで、年収が大きく変わる例がマクニカです。2026年3月期の有価証券報告書には、持株会社と、グループで最も従業員が多い事業会社の両方が載っています。

同じ資料に二つの平均がある

対象の法人 平均年間給与 従業員数 平均年齢 平均勤続
マクニカホールディングス 1,628.6万円 42人 50.3歳 19.2年
株式会社マクニカ 784.0万円 2,894人 39.4歳 11.2年

上場会社はマクニカホールディングスです。同社の従業員の大部分は、子会社との兼務で出向している社員。平均年間給与には、その社員に子会社で支給された年間給与、賞与、基準外賃金が含まれています。

一方、事業会社である株式会社マクニカの平均年間給与は、同社の3月末の従業員に支給された給与をもとに算出されています。こちらには親会社との兼務出向者も含むため、二つの人数を単純に足したり、二つの平均を加重平均したりすることも適切ではありません。

1,628.6万円を採用候補の年収表に載せると、42人の持株会社の特徴を、2,894人の事業会社へ広げてしまいます。今回の事業会社比較に784.0万円を使ったのは、この取り違えを避けるためです。

応募先の法人名まで揃える

持株会社がある企業を比較するときは、募集ページのブランド名ではなく、採用主体の正式名称と一致する数字を探します。ホールディングスの有報しか見つからない場合でも、最大人員会社などの欄に事業会社の給与が載っていないか確認できます。

事業会社の値が見つからなければ、「非開示」として残す方が有用です。持株会社の数字を代用した一覧は、空欄のない表にはなりますが、応募先を比べる資料としての精度が下がります。

この扱いは、持株会社の給与が不自然だという指摘ではありません。人数、年齢、担う職務が違う法人には、それぞれの平均値があります。高い数字を除外することが目的ではなく、比較する会社を揃えるための区別です。

事業会社と持株会社では平均給与を集計する対象者が違い、グループ全体の平均とも異なることを示す図
集計対象の概念図。出向者・兼務者や子会社支給額の扱いは各社の注記を確認します。

給与の増減は何を意味するか

単年の金額に加え、前年からの変化も比較材料になります。ただし、全社平均の変化と、一人ひとりの昇給率は別の数字です。2026年3月期の有報には、給与平均の前年比も開示されています。

増えた会社と減った会社がある

会社 平均年間給与の前年比 併せて確認する点
長瀬産業 +4.7% 賞与・基準外賃金を含む
稲畑産業 +2.2% 単体の従業員構成
阪和興業 +7.8% 給与算定から除く社員の範囲
岩谷産業 −0.5% 単年の小幅な変化
YUASA +3.5% 対象期間は社名変更前
加賀電子 −3.8% 業績の増減と一致するとは限らない
東京エレクトロンデバイス +13.7% E-Ship分配金・株式報酬の算入
マクニカ(事業会社) −5.4% HDの前年比とは別
兼松 +5.1% 賞与・時間外勤務手当等を含む

増減率は2026年3月期の会社開示値。社員個人の昇給率ではありません。

今回の9社には、上昇した会社と下がった会社の両方があります。専門商社という同じ括りでも、給与平均が同じ方向へ動くわけではありません。翌年度の年収を予想する際に、この増減率をそのまま掛ける方法は使えません。

平均は、給与の変更だけでなく、入退社や雇用区分の構成変化でも動きます。たとえば、給与水準が同じ会社でも若手の採用が増えれば全社平均が変わり得ます。これは平均という指標の性質であり、今回下落した特定の会社で採用増が原因だったと確認したものではありません。

期間を伸ばすと、単年の上下とは違う動きも分かります。加賀電子の公式ESGデータでは、平均年間給与は2022年3月期780.4万円、2023年3月期889.0万円、2024年3月期890.1万円、2025年3月期852.3万円、2026年3月期819.6万円でした。

加賀電子の対象年度 平均年間給与
2022年3月期 780.4万円
2023年3月期 889.0万円
2024年3月期 890.1万円
2025年3月期 852.3万円
2026年3月期 819.6万円

直近2年は下がっていますが、2022年3月期よりは39.2万円高い水準です。「上がっている会社」「下がっている会社」という評価は、起点にする年度によっても変わります。比較時点を明記することは、年収のような身近な数字でも欠かせません。

この推移から分かるのは、当該企業の給与平均が一定ではないことまでです。2022年に入社した社員の年収が4年間で39.2万円増えたという意味ではありません。その間に従業員は入れ替わるため、同じ個人を追跡した昇給実績とは区別します。

千円表示を万円へ換算。

会社の増益と給与の増加は別

加賀電子では、2026年3月期の連結営業利益が前年の約236億円から約278億円へ増加しました。一方、提出会社の平均年間給与は前年比3.8%減です。同じ年度でも、連結業績の増加率と、本体の従業員給与の増加率は一致していません。

ここから「利益を社員へ還元していない」と結論づけることもできません。連結営業利益はグループ各社を含む一年の損益であり、給与平均は本体従業員への支給を集計した数字です。賞与の算定・支給時期や人員構成まで揃えなければ、利益との関係は説明しきれません。

同社の新卒募集要項は、賞与を6月・12月に加え、業績に応じて期末賞与を支給する年2〜3回としています。年収を継続的に追う際には、決算だけでなく、会社が公表している報酬の構成も併せて確認したいところです。

月例給、通常賞与、業績に応じた支給、株式に関する報酬を区別すると、今年の高い給与と、毎年の固定的な収入を混同しにくくなります。ただし個別の内訳金額がない項目については、推定して差し引いていません。

年齢・職種から読み直す

応募者が知りたいのは、会社全体の平均より、自分の経験や希望する仕事に対応する給与です。有報の年齢や募集要項の職種区分を重ねると、平均値の使える範囲をもう少し絞れます。

40歳の年収と平均年齢は違う

たとえば、阪和興業は平均37.4歳で997.6万円、東京エレクトロンデバイスは平均46.2歳で1,075.0万円です。ここから「阪和興業で46歳になれば同じ水準を超える」といった年収カーブは作れません。二つの数字は、別々の会社の、年齢も職務も混ざった集団の平均だからです。

同様に、平均年齢が40歳前後の会社で平均年収1,000万円だからといって、入社した人が40歳で必ず1,000万円を受け取るわけではありません。中央値、年齢別分布、役職別の給与がなければ、何割の社員がその水準に届くのかも分かりません。

平均勤続年数は、現在働いている社員の勤続の平均です。マクニカHDでは子会社での勤続を通算しているため、持株会社が設立されてからの年数と一致しなくても矛盾しません。勤続年数だけを離職率の代わりにしたり、長い会社ほど昇給が大きいと判断したりすることも避けます。

年齢や勤続は給与を補正するための係数ではなく、どのような集団の平均かを確かめる補助情報として使います。年齢別モデルが必要なら、企業が公表する職務・等級別の採用条件があるかを調べる方が確実です。

全社平均に含まれる職種の違い

稲畑産業の有価証券報告書は、管理職のプロフェッショナル職、非管理職のスタッフ/チャレンジ職、主にサポート業務を行うアシスタント職を区別しています。チャレンジ職は転居を伴う異動がなく、役割はスタッフ職と同様と説明されています。

こうした区分は、平均を読む際にも意味があります。同社が開示する男女の賃金差異は、男性の賃金を100とした女性の割合で、全従業員では61.3%、プロフェッショナル職では100.0%、スタッフ/チャレンジ職では86.2%、アシスタント職では110.7%です。

会社は、職掌や資格区分ごとの人数構成の違いが全体の差の主な要因だと説明しています。全体の比率だけを、自分が希望する職種の給与差と同じ意味に扱うことはできません。ただし職種内の比率も、年齢や等級など全条件を揃えた比較ではなく、それだけで処遇上の公平性を判断する数字でもありません。

この開示は年収額そのものの職種別内訳ではないため、全社平均1,005.8万円に比率を掛けて女性やスタッフ職の年収を推定することもできません。給与平均の背後に複数の職務集団があることを確認する資料として使います。

職種の区分は初任給に表れる

稲畑産業の新卒募集要項では、スタッフ職とアシスタント職で処遇が分かれています。確認時点の大卒初任給はスタッフ職が月32万円、アシスタント職が月26万円。アシスタント職は勤務地限定で、入社後の転勤は原則ないと説明されています。

加賀電子は、2026年4月実績として大卒総合職が月28万円以上、大卒一般職が月22万7,000円以上を掲載しています。総合職には営業や管理部門、技術職にはFAEや電子回路・電子機器設計などの区分があり、会社名だけでは仕事内容を一つに決められません。

会社・職種 大卒の初任給(月額) 数字の位置づけ
稲畑産業・スタッフ職 32万円 確認日時点の募集要項
稲畑産業・アシスタント職 26万円 勤務地限定、原則転勤なし
加賀電子・総合職 28万円〜 2026年4月実績
加賀電子・一般職 22.7万円〜 2026年4月実績

この表は、職種区分による違いを示す例です。二社の最新初任給ランキングではなく、全社共通の年収表をそのまま希望職種へ当てはめないために掲載しています。稲畑産業のページには上記金額の適用入社年度が明記されていないため、確認日時点の掲載値として扱っています。

月額を12倍した値に、適当な賞与月数を加えて初年度年収を作ることもしません。賞与の初回支給や算定期間、各種手当の支給条件によって総額が変わるためです。募集要項に年収例がなければ、月額の事実と、未確定の年間支給額を分けて読む必要があります。

2026年10月17日確認。

応募先の給与条件を比べる手順

年収比較表は、候補企業を見つける段階で使い、実際の応募では採用条件へ切り替えます。全社平均と、これから働く人に提示される条件を並べても、同じものを比較したことにはなりません。

金額の前に雇用主と仕事を揃える

最初に書き出すのは、雇用契約を結ぶ会社名、職種、等級や役割、勤務地、転勤の範囲です。企業グループ名しか分からない状態なら、給与の確認より先に採用主体を特定します。マクニカの例のように、持株会社と事業会社で参照すべき数字が変わるからです。

次に、募集要項の年収レンジが何を含むかを確かめます。基本給、賞与、時間外勤務手当、住宅などの手当について、含まれるものと別途支給のものを分けます。制度があるという記載だけでは、自分に適用される金額まで決まったことにはなりません。

加賀電子は住宅手当について、勤務地と世帯構成で異なるとし、関東地区の独立生計者である総合職の例を月3万円としています。この金額を同社の応募者全員へ一律に足すことはできません。福利厚生は、名称があるかではなく、適用条件まで確認して比較します。

キャリア採用では、希望する職務に対して提示された条件を優先します。有報の平均より高い・低いだけで判断せず、担当範囲や求められる経験に見合う条件かを確認するためです。求人の上限額を、採用されれば受け取れる額として扱うことも避けます。

年収差を勤務条件と切り離さない

比較用のメモは、「固定的に支給される給与」「業績や評価で変わる給与」「適用条件のある手当」「仕事内容・勤務地」の欄を分けると整理しやすくなります。未確認の欄はゼロ円とせず、未確認のままにして、説明会や選考過程で照合する項目に残します。

仮に、二つの求人の想定年収がともに800万円でも、一方が賞与を多く含み、もう一方が月例給の比重を高くしていれば、毎月の収入や翌年の変動幅は異なります。これは比較方法を示す仮定であり、今回掲載した企業の給与内訳を推定したものではありません。

所定労働時間や時間外勤務の扱いも、条件表へ併記できます。ただし会社平均の年収を会社平均の勤務時間で割って、個人の時給や働きやすさを断定する方法には向きません。給与と労働時間の集計対象が一致していないことがあるためです。

扱いたい商材や仕事がまだ定まっていない場合は、給与で候補を絞る前に、専門商社の業界別の役割を確認すると選びやすくなります。鉄鋼、化学品、食品、機械などの違いは次の記事に整理しています。

今回の比較で最も大きかった読み違いの可能性は、数十万円の差ではなく、マクニカの持株会社と事業会社の取り違えでした。年収の高い会社を探す際にも、まず法人と職種を揃え、そのうえで給与の内訳を比べる。この順番なら、公開された平均値を応募先選びの材料として使えます。