双日は、日本を代表する総合商社の一つです。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商と並び、「七大商社」の一角として扱われることが多い会社です。ただし、双日は他の大手総合商社と比べると、事業規模や利益規模はやや小さく、企業研究では「五大商社との違いが分かりにくい」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、双日には双日ならではの見方があります。大きな資源権益や巨大な川下プラットフォームだけで語る会社ではなく、トレードを起点に事業の種を見つけ、それを育て、複数の事業の「塊」にしていく会社として見ると理解しやすくなります。双日は中期経営計画2026において、これまでに蒔いた事業の「種」や「点」を「塊」とし、成長を加速する方針を掲げています。出典:双日「中期経営計画2026」。(双日株式会社)
双日の中期経営計画2026の位置付けは、「Set for Next Stage」です。同社は、2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げています。また、Next Stageとして、当期利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円を目標に据えています。これは、現在の利益規模から更に成長し、企業価値を引き上げようとする中長期の方向性を示しています。(双日株式会社)
この記事では、双日の基本情報、事業ポートフォリオ、中期経営計画2026、トレード起点の成長、化学品、自動車、航空・交通インフラ、エネルギー・総合インフラ、金属・資源・リサイクル、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービス、財務戦略、リスク、他商社との違いを整理します。企業研究や総合商社比較で使えるように、双日の強みの構造が分かる形で解説します。
双日を一言でいうと
双日を一言で表すなら、トレードを起点に事業の種を見つけ、双日らしい成長ストーリーを作る総合商社です。資源価格の上昇で大きく稼ぐ商社というよりも、化学品、自動車、航空・交通インフラ、エネルギー・総合インフラ、金属・資源・リサイクル、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスなど、複数領域で収益源を積み上げる会社です。
双日は、中期経営計画2026において「双日らしい成長ストーリー」の実現を掲げています。中期経営計画2023までに成長の「型」を身につけ、飛躍の「種」を蒔いたとした上で、中期経営計画2026では、蒔いた事業の種や点を塊とし、成長を更に加速すると説明しています。(双日株式会社)
この表現は、双日の企業研究でかなり重要です。双日は、既に巨大な事業基盤を持つ会社というよりも、これまで仕込んできた事業を大きくし、複数の収益の塊を作る段階にある会社です。つまり、双日を見る際には、「今の規模が大きいか」だけではなく、「どの事業の種を育てているか」「どの領域で次の収益の塊を作ろうとしているか」を見る必要があります。
また、双日は中期経営計画2026で、3カ年平均の当期利益1,200億円超、ROE12%超、成長に向けた6,000億円超の投資実行を定量目標として掲げています。更に、株主還元については、基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元に充当し、DOE4.5%を基準とした累進的な配当方針と機動的な自己株式取得を示しています。(双日株式会社)
この点から、双日は単に「小さめの総合商社」ではありません。成長投資、人的資本、キャッシュ・フロー、ROE、株主還元を意識しながら、次の成長ステージへ進もうとしている会社です。
双日の基本情報
双日は、総合商社として幅広い事業を展開しています。公式サイトの事業紹介では、自動車本部、航空・交通インフラ本部、エネルギー・総合インフラ本部、金属・資源・リサイクル本部、化学本部、生活産業・アグリビジネス本部、リテール・コンシューマーサービス本部が掲載されています。(双日株式会社)
この事業構成を見ると、双日は特定の一事業だけに依存する会社ではありません。自動車、航空、交通インフラ、エネルギー、金属、資源、リサイクル、化学品、生活産業、アグリ、リテールなど、複数の産業にまたがっています。一方で、三菱商事や三井物産のような巨大な資源権益の印象よりも、事業ごとの収益基盤を着実に積み上げる印象が強い会社です。
双日の統合報告書2025ページでは、同社のDNAとして、逆境から歩みを始め、長い再建の道のりを経て、安定的に当期純利益1,000億円を創出できるまでに基盤を強化してきたと説明されています。また、厳しい環境下でも常に先を読み、変化を恐れず、期待される役割を果たすべく提供機能の変革を続けてきたとも記載されています。(双日株式会社)
この歴史は、双日を理解する上で重要です。双日は、規模の大きさで語るよりも、再建を経て収益基盤を強化し、次の成長へ進もうとしている会社として見る方が自然です。統合報告書2025ページでも、次なる成長へ向けて、双日の歩みは止まらないと表現されています。(双日株式会社)
双日の事業ポートフォリオ
双日の事業ポートフォリオは、化学品、自動車、航空・交通インフラ、エネルギー・総合インフラ、金属・資源・リサイクル、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスを中心に構成されています。公式サイト上でも、これらの本部が事業紹介の主要カテゴリとして示されています。(双日株式会社)
双日の特徴は、こうした事業領域を通じて、収益の「塊」を複数作ろうとしている点です。中期経営計画2026では、蒔いた事業の「種」や「点」を「塊」とし、成長を更に加速すると説明されています。これは、個別案件や小さな取引を点で終わらせず、周辺事業や機能を組み合わせて、まとまりある収益基盤へ育てるという考え方です。(双日株式会社)
例えば、化学品であれば、単に原料を売買するだけではなく、顧客接点、物流、在庫、加工、地域展開、環境対応まで含めて事業を広げることができます。自動車であれば、輸出入、販売代理店、部品、アフターサービス、ファイナンス、中古車などへ展開できます。航空・交通インフラであれば、機体、空港、鉄道、都市交通、インフラ運営など、周辺に広がる事業機会があります。
このように、双日のポートフォリオは、巨大な単独事業で一気に稼ぐというより、複数の事業領域で「点」を「塊」にしていく構造です。したがって、企業研究では、事業領域の名前だけでなく、その事業がどのように周辺へ展開され、収益の厚みを増しているかを見る必要があります。
双日の強みは「事業や人材を創造し続ける」ことにある
双日の中期経営計画2026では、2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」が掲げられています。マーケットニーズや社会課題に応える価値、すなわち事業や人材の創造を通じて企業価値を向上させるという考え方です。(双日株式会社)
この表現は、双日の強みを理解する上で非常に重要です。双日は、既に巨大な資産を持つだけの会社ではなく、これから事業を作り、人材を育て、企業価値を伸ばしていく会社として自己定義しています。つまり、双日の企業研究では、既存事業の大きさだけでなく、どのように新しい事業や人材を生み出そうとしているかを見る必要があります。
また、双日は中期経営計画2026を、Next Stageに向けた成長基盤と人的資本の強化期間と位置付けています。具体的には、企業価値2倍成長の達成を見据え、成長基盤の強化と人的資本の強化に取り組むとされています。(双日株式会社)
この点は、他の総合商社との違いを考える上でも面白いところです。三菱商事は「総合力」、三井物産は「創る・育てる・展げる」、伊藤忠商事は「利は川下にあり」、住友商事は「No.1事業群」、丸紅は「Global crossvalue platform」、豊田通商は「モビリティ・アフリカ」が軸でした。双日の場合は、事業と人材を創造し続けること、そして事業の種を塊にすることが中心テーマになります。
中期経営計画2026で見る双日の方向性
双日の中期経営計画2026は、「Set for Next Stage」という位置付けです。同社は、中期経営計画2023までに成長の型を身につけ、飛躍の種を蒔いたと説明しています。その上で、中期経営計画2026では、事業基盤の確立・強化に取り組み、双日らしい魅力ある事業の塊を複数形成するとしています。(双日株式会社)
定量目標としては、3カ年平均で当期利益1,200億円超、ROE12%超を掲げています。また、財務規律を堅持しながら、成長に向けて6,000億円超の投資を実行する方針も示されています。(双日株式会社)
この目標から分かるのは、双日が「守り」だけでなく「攻め」に入っているという点です。収益基盤を安定させる段階から、次の成長に向けて投資を行う段階へ進もうとしています。ただし、財務規律を堅持するとも明記されているため、無制限な投資ではなく、成長投資と財務健全性のバランスを取る方針です。(双日株式会社)
また、キャッシュ・フローマネジメントでは、基礎的営業キャッシュ・フローと資産入替を原資に、成長・人材投資と株主還元を実行するとされています。キャッシュアロケーション方針としては、基礎的営業キャッシュ・フローの7割程度を成長・人材投資、3割程度を株主還元に充当する方針です。(双日株式会社)
この点から、双日は成長投資だけでなく、人への投資をかなり重視していることが分かります。事業を創造し続けるためには、人材が必要です。双日が人的資本の強化を中期経営計画の中心に置いているのは、事業規模を拡大するだけでなく、次の成長を担う人材を育てる必要があるためです。
化学品事業の特徴
双日の中で、化学品は重要な事業領域の一つです。公式サイトの事業紹介でも、化学本部が主要な本部の一つとして掲載されています。化学品は、素材、樹脂、機能材料、工業薬品、農業、生活用品、環境関連など、多くの産業に関わる領域です。(双日株式会社)
化学品事業の特徴は、トレーディングと事業投資の両方が成立しやすい点です。化学品は種類が多く、顧客も幅広いため、単なる売買だけでなく、物流、在庫、加工、品質管理、環境規制対応、地域販売網など、多くの機能が価値になります。
双日らしい見方をすれば、化学品は「点」を「塊」にしやすい事業です。ある商材のトレードから始まり、顧客基盤を作り、周辺商材を増やし、物流や加工機能を持ち、地域展開を進めることで、まとまりある事業群に発展させることができます。
また、化学品は脱炭素や循環型経済とも関係します。リサイクル素材、バイオ素材、低環境負荷素材、電池材料、農業関連資材など、社会課題と結び付く領域が多くあります。双日が化学品をどのように成長領域へ広げるかは、今後の企業研究でも注目すべきポイントです。
自動車事業の特徴
双日は、自動車本部を持っています。自動車事業は、車両の輸出入、販売代理店、ディーラー、部品、アフターサービス、ファイナンス、中古車、モビリティサービスなど、周辺領域が広い事業です。公式サイトの事業紹介でも、自動車本部が主要な事業カテゴリとして掲載されています。(双日株式会社)
双日の自動車事業を見る際には、単なる車両販売ではなく、地域事業として見ることが重要です。自動車は国や地域によって需要、販売網、金融、規制、顧客行動が大きく異なります。販売代理店やディーラーを通じて現地に根付くことで、長期的な顧客接点を持つことができます。
また、自動車産業は大きな変化の中にあります。EV化、コネクテッド、シェアリング、中古車流通、ファイナンス、アフターサービスの高度化など、従来の販売モデルだけではなく、周辺サービスの重要性が高まっています。
双日にとって、自動車事業は事業の種を広げやすい領域です。販売から部品、整備、金融、中古車、デジタルサービスへ広げることで、収益の塊を作ることができます。豊田通商ほどトヨタグループ色は強くありませんが、双日らしい地域密着型の事業拡大が見やすい領域と言えます。
航空・交通インフラ事業の特徴
双日は、航空・交通インフラ本部を持っています。航空・交通インフラは、航空機、空港、鉄道、都市交通、インフラ運営、リース、メンテナンスなど、長期的な事業機会がある領域です。公式サイトの事業紹介でも、航空・交通インフラ本部が主要カテゴリとして掲載されています。(双日株式会社)
この領域の特徴は、社会インフラとしての重要性が高い点です。航空や交通は、経済活動や人の移動を支える基盤です。一方で、景気、旅客需要、燃料価格、金利、為替、規制、安全基準の影響を受けやすい事業でもあります。
総合商社にとって、航空・交通インフラは、資金力、契約実務、リスク管理、パートナーシップ、長期運営力が問われる領域です。航空機関連では、機体や部品、整備、リース、アセットマネジメントが関わります。交通インフラでは、公共性や政府・自治体との関係も重要になります。
双日がこの領域で強みを出すには、単発の案件に終わらせず、周辺事業を組み合わせて収益の塊を作ることが重要です。例えば、航空機取引から整備、部品、空港関連、交通インフラ運営へ広げる。鉄道や都市交通から、設備、運営、金融、メンテナンスへ広げる。こうした展開が、双日の中期経営計画が掲げる「点を塊にする」という考え方とつながります。
エネルギー・総合インフラ事業の特徴
双日は、エネルギー・総合インフラ本部も持っています。エネルギーとインフラは、総合商社にとって重要な領域です。電力、ガス、再生可能エネルギー、インフラ開発、発電、燃料、環境関連など、多くの事業機会があります。公式サイトの事業紹介でも、エネルギー・総合インフラ本部が主要カテゴリとして掲載されています。(双日株式会社)
この領域は、収益機会が大きい一方で、投資金額も大きくなりやすい分野です。発電やインフラ事業は、契約期間が長く、プロジェクトファイナンス、規制、燃料価格、金利、為替、政治リスクなどが絡みます。そのため、投資判断とリスク管理が非常に重要です。
双日は、中期経営計画2026で6,000億円超の投資を実行する方針を示しています。エネルギー・総合インフラのような領域は、成長投資の対象になり得る一方で、資本効率や財務規律とのバランスが求められます。(双日株式会社)
また、エネルギー分野は脱炭素の影響を強く受けます。再生可能エネルギー、低炭素燃料、分散型電源、蓄電池、水素、アンモニアなど、既存エネルギーから次世代エネルギーへの移行が進む中で、双日がどの領域に資本を配分するかは重要な論点です。
金属・資源・リサイクル事業の特徴
双日は、金属・資源・リサイクル本部を持っています。金属や資源は、産業の基盤であり、鉄鋼、自動車、電機、建設、インフラ、再生可能エネルギー、EVなど、多くの分野に関わります。公式サイトの事業紹介でも、金属・資源・リサイクル本部が主要カテゴリとして掲載されています。(双日株式会社)
この事業領域では、資源価格の変動が大きなリスクになります。金属価格が上昇すれば利益機会が増えますが、価格が下がれば収益が悪化する可能性があります。また、鉱山開発や資源投資では、操業リスク、環境規制、地政学リスクも重要です。
一方で、リサイクルは今後の成長テーマです。脱炭素や循環型経済が進む中で、金属スクラップ、電池材料、レアメタル、廃棄物再資源化などの重要性が高まっています。金属・資源・リサイクルという本部名からも、双日が単なる資源取引だけでなく、循環型の資源事業にも関わろうとしていることが分かります。
双日らしい見方をすれば、金属・資源・リサイクルも、既存のトレードから周辺機能へ広げることが重要です。資源を仕入れて販売するだけでなく、加工、在庫、リサイクル、顧客の脱炭素対応、地域展開まで含めて事業を作ることで、収益の塊にできます。
生活産業・アグリビジネスの特徴
双日は、生活産業・アグリビジネス本部を持っています。生活産業・アグリビジネスは、食料、農業、消費財、生活関連素材、食品流通、農業資材など、生活者や社会インフラに近い領域です。公式サイトの事業紹介でも、生活産業・アグリビジネス本部が主要カテゴリとして掲載されています。(双日株式会社)
アグリビジネスは、今後も重要なテーマです。人口増加、気候変動、食料安全保障、農業生産性、肥料、農薬、種子、物流、食品加工など、多くの課題が存在します。総合商社は、農業資材や食料トレードだけでなく、現地生産、加工、流通、販売まで関わることができます。
生活産業も、比較的安定した需要が見込める領域です。ただし、競争が激しく、消費者ニーズの変化も速いため、単に商品を扱うだけでは差別化が難しくなります。事業を伸ばすには、ブランド、流通、データ、物流、地域展開などを組み合わせる必要があります。
双日の生活産業・アグリビジネスは、他の大手商社に比べると知名度が高い事例が少ないかもしれません。しかし、だからこそ今後の「事業の塊」づくりで注目すべき領域です。食料や生活関連は、社会課題と市場需要が重なる分野であり、事業を育てる余地があります。
リテール・コンシューマーサービスの特徴
双日は、リテール・コンシューマーサービス本部も持っています。これは、消費者に近い川下領域を扱う事業です。公式サイトの事業紹介でも、リテール・コンシューマーサービス本部が主要カテゴリとして示されています。(双日株式会社)
リテール・コンシューマーサービスの特徴は、顧客接点にあります。消費者の購買行動、生活スタイル、所得水準、地域性、デジタル化の進展を捉えながら、商品やサービスを提供する必要があります。伊藤忠商事のファミリーマートほど明確な巨大川下プラットフォームがあるわけではありませんが、双日にとっても消費者接点は今後の成長余地がある領域です。
この分野では、デジタル化が重要です。EC、決済、顧客データ、マーケティング、物流、店舗運営、サブスクリプションなど、消費者接点は様々な形で拡張できます。双日がリテール領域で事業の塊を作るには、単に小売事業を持つだけでなく、デジタルや物流、金融、ブランドを組み合わせる必要があります。
リテール・コンシューマーサービスは、資源やインフラに比べると投資規模は小さく見えるかもしれません。しかし、生活者に近い領域は、需要の変化を捉えやすく、新しい事業を作りやすい分野でもあります。双日の「事業や人材を創造し続ける」という目指す姿にもつながる領域です。
財務戦略とキャッシュ・フロー経営
双日の中期経営計画2026では、財務規律を堅持しつつ、成長に向けて6,000億円超の投資を実行する方針が掲げられています。これは、双日が次の成長ステージに向けて投資を積極化する姿勢を示しています。(双日株式会社)
一方で、双日はキャッシュ・フロー経営も重視しています。中期経営計画2026では、基礎的営業キャッシュ・フローと資産入替を原資に、成長・人材投資と株主還元を実行するとされています。キャッシュアロケーション方針として、基礎的営業キャッシュ・フローの7割程度を成長・人材投資、3割程度を株主還元に充当する方針も示されています。(双日株式会社)
また、価値創造の測定・評価として、Next StageでのROE15%に向け、営業本部が目指すべきキャッシュROIC、つまりCROICの水準を価値創造ターゲットとして設定し、数値のモニタリングと改善施策を行うとされています。(双日株式会社)
この点は、双日を企業研究する上で重要です。総合商社は利益だけでなく、どれだけキャッシュを生み、どの投資に回し、どれだけ資本効率を高めるかが問われます。双日は、Next StageとしてROE15%、当期利益2,000億円、時価総額2兆円を掲げており、そのためにCROICを使って価値創造を測ろうとしています。(双日株式会社)
双日のリスク
双日は成長投資を進める一方で、リスクも抱えています。自動車、航空・交通インフラ、エネルギー、金属・資源、化学品、生活産業、リテールなど、いずれも外部環境の影響を受ける事業です。
自動車では、地域経済、為替、販売金融、EV化、競争環境が影響します。航空・交通インフラでは、旅客需要、金利、燃料価格、規制、安全基準が重要です。エネルギー・総合インフラでは、資源価格、電力価格、政策、金利、地政学が影響します。金属・資源では、市況、環境規制、操業リスクが大きな論点です。
また、双日は中期経営計画2026で6,000億円超の成長投資を掲げています。投資を増やすほど、投資先の選定、PMI、事業管理、回収可能性、減損リスクが重要になります。成長投資は企業価値向上のために必要ですが、投資判断を誤れば損失につながります。(双日株式会社)
双日のリスク管理を見る上では、CROICを価値創造ターゲットとして設定し、数値のモニタリングと改善施策を行う方針が重要です。これは、単に利益額だけを見るのではなく、キャッシュベースの資本効率を意識して事業を管理する姿勢を示しています。(双日株式会社)
他商社との違い
双日を他の総合商社と比較すると、最も大きな違いは規模と成長ステージです。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事は、すでに当期利益8,000億円から9,000億円規模の巨大商社です。住友商事や丸紅も5,000億円規模の利益を出しています。豊田通商はモビリティとアフリカという独自軸を持ち、3,000億円台の利益を出しています。
これに対して双日は、利益規模では他の大手商社より小さいものの、中期経営計画2026で3カ年平均当期利益1,200億円超、Next Stageで当期利益2,000億円を目指しています。つまり、双日は既に巨大な利益規模を持つ会社というより、次の成長ステージへ向かう会社として見る方が自然です。(双日株式会社)
また、双日は「事業や人材を創造し続ける総合商社」を目指している点が特徴です。これは、単に事業を保有するだけでなく、事業の種を作り、育て、塊にしていく考え方です。三菱商事の総合力、三井物産の創る・育てる・展げる、伊藤忠商事の利は川下にあり、住友商事のNo.1事業群、丸紅のGlobal crossvalue platform、豊田通商のモビリティ・アフリカとは異なる表現で、双日らしさを示しています。(双日株式会社)
双日を一言で他商社と差別化するなら、規模は相対的に小さいが、トレード起点で事業の種を育て、複数の収益の塊を作ろうとしている総合商社です。成長余地や変化の大きさに注目するなら、双日は面白い会社です。
双日を理解するポイント
双日を理解するポイントは、第一に「Set for Next Stage」です。中期経営計画2026は、Next Stageに向けて事業基盤を確立・強化する期間とされています。既に安定的に1,000億円規模の利益を創出できる基盤を作った上で、次の成長ステージを目指している点を押さえる必要があります。(双日株式会社)
第二に、「点を塊にする」という考え方です。双日は、蒔いた事業の種や点を塊にし、成長を加速すると説明しています。企業研究では、個別事業だけでなく、その事業が周辺へどう広がり、収益基盤になっていくかを見る必要があります。(双日株式会社)
第三に、6,000億円超の成長投資です。双日は、財務規律を堅持しながら、成長に向けて6,000億円超の投資を実行する方針を掲げています。どの領域に投資し、どのように事業の塊を作るかが、今後の企業価値を左右します。(双日株式会社)
第四に、人的資本です。中期経営計画2026では、成長基盤の強化だけでなく、人的資本の強化も明確に位置付けられています。事業や人材を創造し続ける総合商社を目指す以上、人材育成や人への投資は双日の成長戦略の中心にあります。(双日株式会社)
第五に、CROICです。双日は、Next StageでのROE15%に向け、営業本部が目指すべきCROICの水準を価値創造ターゲットとして設定するとしています。これは、双日が単に利益を増やすだけでなく、キャッシュベースの資本効率を重視していることを示しています。(双日株式会社)
双日はどんな人に向いているか
双日は、完成された巨大事業を管理するよりも、これから事業を育てていくことに関心がある人に向いています。中期経営計画2026では、事業の種や点を塊にすることが掲げられており、新しい事業基盤を作る余地が大きい会社です。(双日株式会社)
また、トレード起点で事業を広げることに興味がある人にも向いています。化学品、自動車、金属、エネルギー、生活産業、リテールなど、トレーディングから顧客接点や市場ニーズを捉え、周辺事業へ広げる機会があります。
更に、規模の大きな会社の中で安定的に働くというよりも、相対的に変化や成長余地のある環境で挑戦したい人にも合いやすいでしょう。双日は、Next Stageとして当期利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円を掲げており、会社全体として成長を目指している段階にあります。(双日株式会社)
一方で、双日で働くには、投資規律や数字への意識も必要です。中期経営計画2026では、ROE12%超、CROIC、キャッシュ・フローマネジメント、基礎的営業キャッシュ・フローの配分方針が示されています。事業を作るだけでなく、資本効率やキャッシュ創出力を意識して事業を育てる必要があります。(双日株式会社)
まとめ:双日は事業の種を塊にし、次の成長ステージを目指す総合商社
双日は、七大商社の中では相対的に規模が小さい会社です。しかし、その分、次の成長ステージへ向けた変化や成長余地が見えやすい会社でもあります。双日は、統合報告書2025ページで、逆境から歩みを始め、長い再建の道のりを経て、安定的に当期純利益1,000億円を創出できるまでに基盤を強化してきたと説明しています。(双日株式会社)
中期経営計画2026では、「Set for Next Stage」を掲げ、蒔いた事業の種や点を塊とし、成長を更に加速する方針を示しています。2030年の目指す姿は「事業や人材を創造し続ける総合商社」であり、Next Stageとして当期利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円を掲げています。(双日株式会社)
定量目標としては、3カ年平均で当期利益1,200億円超、ROE12%超、成長に向けた6,000億円超の投資実行、基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元に充当する方針が示されています。また、基礎的営業キャッシュ・フローの7割程度を成長・人材投資、3割程度を株主還元に充当するキャッシュアロケーション方針も示されています。(双日株式会社)
双日を企業研究で見る際には、「規模が小さい総合商社」とだけ捉えないことが重要です。化学品、自動車、航空・交通インフラ、エネルギー・総合インフラ、金属・資源・リサイクル、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスといった事業領域で、どのように事業の種を育て、収益の塊を作ろうとしているのかを見る必要があります。
双日は、トレードを起点に事業機会を見つけ、人材と投資を使って事業を育て、次の成長ステージを目指す総合商社です。七大商社分析の最後に双日を見ることで、総合商社には「既に巨大な収益基盤を持つ会社」だけでなく、「これから収益の塊を複数作っていく会社」もあることが分かります。